2010年5月11日火曜日

IZINMUSUME

巻き毛の娘を探していた
ぺロニスタが集まる酒場で
一人、歌をうたっていた
この街の女が気味悪がるような
カーキ色のコートを羽織って
汚れたワークブーツを履いていた
異人娘
彼女のことをなぜか
忘れられないでいる

巻き毛の娘を探していた
彼女が踊ったのは
透明な音楽
いつのまにか
騒がしい酒場で鳴るギターラの音も
酔っ払いの笑い声も消え去って
彼女が踏むステップだけが
鳴り響いていた
こぼれたワインで濡れた床の上を
軽やかに舞っていた
異人娘
彼女の事を今も
忘れられないでいる

巻き毛の娘を探していた
次はどこへ行くのか
くだらないガウチョ達にからかわれても
見向きもしない
血の染み込んだこの土地に
唾を吐く
異人娘
ここでは咲かない
花の匂いがした
彼女のことをずっと
忘れられないでいる

お前の眠るかび臭い部屋
脱ぎ捨てられた服
開けっ放しの窓
ケチュア語の詩集
硬いベッドの上で
宇宙の果てまで続く
夢を見ている
異人娘
今も思っている彼女の事を

何も起こらない夜の
からっぽな欲望
そんな街さ ブエノスアイレスなんて
深く沈んだ月が
笑っていった

巻き毛の娘を探している
出会わなければよかったなと
思うときもある
お前は言った
仕返しにきただけだと
500年の呪い
解き放つため
触れてみると
冷たい手をしていた
名前も知らない
異人娘

プラタ川が凍りつくとき
手紙を書こう
お前が教えてくれた言葉で
くそったれなブエノスアイレスに
彼女はもういない


忘れられないでいる
異人娘

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